明確な理由がなく、精液検査の結果が良くなかった時、何が原因なのだろう・・・ と悩まれることがあると思います。
精液の質の低下には、大気汚染、喫煙、ストレス、化学物質などが関連している可能性もありますが、食事内容についても多くの研究が行われており、精液の質が良い人が何を食べているかが分かりつつあります[1]。
今回は、精液の質が良い人は日々何を食べているかについて、理由も含めてお伝えします。
ヨーロッパやアメリカが中心になりますが、健康状態に問題のない男性、または不妊治療をしている男性に対して、日々の食事内容と精液の状態に関連があるかの調査が行われています。
調査の結果、精液の状態が良い人は、魚介類、鶏肉、穀物、野菜、果物、低脂肪乳製品を多く摂る傾向にあることがわかりました[1]。
これらの食品には、精液の質を良い状態に保つために必要な栄養素や食品成分が含まれています。以下の4つの栄養素の特徴を踏まえて食品を選ぶようにしてみましょう。
精子は活性酸素によって悪影響を受けます。
野菜と果物にはこの活性酸素の働きを抑制したり、活性酸素自体を除去する抗酸化作用を持つビタミン(ビタミンA(βカロテン)、ビタミンC、ビタミンE)が含まれています[1]。
緑の葉野菜(ほうれん草、ブロッコリーなど)には葉酸が多く含まれています。
葉酸の摂取が多い男性の方が精子の奇形率の割合が低く、葉酸が精子の形成に重要である可能性があるとされています[1,2]。
野菜・果物・全粒粉穀物には食物繊維が多く含まれています。
男性において食物繊維は女性ホルモンの一種である「エストロゲン」というホルモンの代謝に関わっている可能性があるとされ、エストロゲンが低いことが正常な生殖能力に不可欠とされています[1,2]。
魚の油には多価不飽和脂肪酸が多く含まれています。
多価不飽和脂肪酸の1種であるDHAは精液に多く含まれており、DHAの摂取量が多いと、精液の質が良くなるとされています。
魚とは逆に、肉類に多く含まれている飽和脂肪酸は、摂取量が多くなるほど 精液の質が低下するとされています。鶏肉は、牛肉や豚肉に比べて飽和脂肪酸が少なく、 また、牛乳・乳製品も低脂肪を選ぶことで、飽和脂肪酸の摂取量を少なくすることができます[1,2]
精液検査の結果が悪いと気落ちしてしまうかもしれません。
しかし、精子は毎日精巣で作られ、毎日摂る食事を栄養源にして約74日をかけて 発育・成熟していきます[3]。
食生活を振り返りながら、精液の質の良い人が何を食べているかを参考に、いつもと違う食品を選ぶようにしてみるのも改善案の1つとして考えられます。
ヨーグルトを低脂肪や無脂肪のものに代えたり、外食の時に魚料理の食べられるお店を選ぶなど、無理なくできることから始めてみましょう。
【参考文献】(すべて2024年2月22日閲覧)
[1] Salas-Huetos A, et.al.Dietary patterns, foods and nutrients in male fertility parameters and fecundability: a systematic review of observational studies. Hum Reprod Update. 2017 Jul 1;23(4):371-389.
[2] 文部科学省, 日本食品標準成分表(八訂)増補2023
[3] Amann RP. The cycle of the seminiferous epithelium in humans: a need to revisit? J Androl. 2008 Sep-Oct;29(5):469-87.
【プロフィール】管理栄養士 妊活食事アドバイザー 榊玲里
自身の不妊症の経験をいかし、妊活食事アドバイザーとして不妊で悩む方に向けて活動。コラムの執筆、オンラインでの栄養カウンセリング、不妊専門クリニックにおいて妊娠しやすい身体づくりのため食事のセミナーを行っている。著書に「身近な素材ですぐできる手作り健康常備食」(PHP研究所)他。